photo by Taro Tanpo
今年チームクレブに新加入したモーグル・田口友麻(たぐち ゆま)。一見、どこにでもいる女子大生だが、雪上では一変。小柄な体からは想像できないスピードとダイナミックなエアーで観る者を魅了する。そんな彼女が歩んできた葛藤と成長の道、そして支えてくれる人たちへの思いとは?
東京生まれ東京育ちの田口友麻にとって、スキーは幼い頃から日常の一部だった。NASPAやかぐらなど湯沢のゲレンデに、スキー好きの両親に連れられて毎週末通っていたある時から、モーグルに没頭するようになる。現地で出会った川村あんりにチームを紹介されたのだ。
「それまでは純粋にスキーが好きで滑っていただけでした。両親も競技志向ではなかったです。でも“同世代にこんなにできる子がいる!”と刺激を受けました」
今ではナショナルチームの一員として世界の舞台に立つが、当初は思うように結果が出ない時期が長く続いた。
「まわりの同世代の子たちに比べて、上位の大会に出るのが遅く、自分だけ取り残されているような感覚でした。当時は辛かったです」
それでも田口は歩みを止めず、悔しさを糧に少しずつ成果を重ね、自信と実力をつけていった。

2024-25シーズン、田口はW杯やユニバーシアード、世界ジュニア、全日本と多忙なシーズンを過ごした。なかでも印象に残っているのがW杯北米戦。カナダのヴァル・サン・コーム戦で自身初の決勝進出、9位入賞を果たす。
「うれしかった反面、“たまたまだったんじゃないか”って不安もありました」
好調の一方で、終盤にはクラッシュや不本意な結果も。W杯最終戦ではプレッシャーから本来の力を出せず、悔し涙を流した。
「最終戦の結果で来シーズンのW杯出場権が決まると発表され、体が固まってしまいました。レース後に両親に電話した時はずっと泣いてしまいました」
そんな彼女を支えるのが家族。幼い頃から一緒に滑っていた両親、そして同じくモーグルに打ち込む弟。時には厳しい意見もあるが、常に励ましてくれる。
「『滑りのここが良くなかった』とズバズバ言われることもあります。けれども『明日はベストランできるように頑張ろう』って言ってくれるのが本当に心強いです」

田口の武器はスピードとエア。器械体操の経験から、空中での姿勢やバランスには自信がある。デュアルモーグルでは高難度の技を武器にアドバンテージを得る一方で、コブでのターンにはまだ課題を感じている。
「モーグル選手ですが、実はコブが苦手で(笑)。ターンだけなら国内でも中の上くらい。もっと磨いていきたいです」
現在は早稲田大学で学業と競技の両立にも挑んでいる。日々忙しい日常を送りながらも、田口が見据えるのは明確な夢だ。
「オリンピックに出て、表彰台に立ちたい。幼い頃からずっとそう言い続けてきました。特に、幼少期に一緒に滑っていた原大智選手が平昌五輪でメダルを獲ったことや、昨シーズン出場したユニバーシアードでの経験が大きな転機になりました。JAPANのユニフォームを着て、特別な舞台で戦うあの感覚を味わいたい。そのためにも、大学生のうちに一度その大舞台を経験し、次の五輪で夢を叶えたいと思っています」
支えてくれる人への感謝を胸に、田口友麻はこれからも着実に前へと歩み続ける。

Profile

田口友麻 Yuma Taguchi
2005年10月25日生、東京都あきる野市出身。3歳からスキーを始め、小学生の頃から本格的に競技生活をスタート。2023年全日本選手権で優勝を飾り、ナショナルチーム入り。早稲田大学スキー部所属。
※ Xraeb book「And Snow Vol.4」(2025)より抜粋